「インド工科大学には天才が多いと聞くけれど、本当?」
「なぜ多くの天才を輩出することができる?」
この記事を読んでいる方は、そのような疑問を持っていることでしょう。
インド工科大学は、卒業生の多くが世界のIT企業をリードする存在となっていることで注目を集めています。
中には、GAFA(Google、amazon、Facebook<現・META>、Apple)から年俸1,000万〜2,000万円以上を提示される卒業生も少なくないと言います。
さらには、43歳でGoogle CEOに就任したサンダー・ピチャイ氏など、著名な経営者の中にもインド工科大学の卒業生が多く見られます。
このように、他を抜きん出た天才が生まれる理由としては、以下のようなことが考えられます。
・独自の入学試験をクリアした学生のみが入学できること
・高い教育水準を保っていること
・「デュアルディグリー」という制度があること
・全寮制であること
・IT業界がカースト制による職業制限を受けないこと
そこでこの記事では、インド工科大学の天才たちについて紹介していきましょう。
◎インド工科大学が輩出した天才たち
◎インド工科大学に天才が多い理由
最後まで読めば、知りたいことがわかるでしょう。
この記事で、あなたがインド工科大学についてよく理解できるよう願っています。
1.インド工科大学が輩出した「天才」たち
近年、シリコンバレーをはじめとする世界中の大手IT企業では、インド人エンジニアやインド人経営者が活躍しています。
中でもインドの理系国立大学の最高峰・インド工科大学の出身者には優秀な人材が豊富だと言われ、卒業生に1,000万〜2,000万円相当の年俸を提示して獲得に躍起になる企業も増えています。
では、インド工科大学の卒業生の中で、実際に「天才」と言われ、業界にイノベーションを起こした人材にはどのような例があるでしょうか?
まずは著名な卒業生たちを見てみましょう。
1-1.Google CEO サンダー・ピチャイ
インド工科大学の卒業生といえば、まず筆頭に上がるのがサンダー・ピチャイ氏でしょう。
インド工科大学カラグプル校を卒業後、スタンフォード大学、ペンシルヴェニア大学で修士号をとりマッキンゼー&カンパニーに入社、2004年にはGoogleに入社しています。
Googleでの彼の優秀さを示すエピソードがあります。
実は、Googleが独自のブラウザ「Google Chrome」を開発しようというアイディアは、ピチャイ氏が発案したものだというのです。
当時のCEOは、そのプロジェクトを無駄だと判断して反対したそうですが、開発を進めた結果、Chromeは大きな成功をおさめました。
また、近年のピチャイ氏は「AIファースト」というコンセプトを掲げ、「Googleホーム」などの音声認識システムや、「Googleレンズ」に代表される視覚認識システムにも力を入れています。
AIを最大限に活用し、人々の生活に、今まで誰も成し得なかったイノベーションを起こそうとしているのです。
1-2.ソフトバンク元副社長 ニケシュ・アローラ
また、ピチャイ氏と並んで名前が上がるのが、ニケシュ・アローラ氏です。
出身は、インド工科大学バラナシ校(当時はバナーラス・ヒンドゥー大学)で、電子工学を学びました。
卒業後はボストンカレッジで理学修士、ノースイースタン大学でMBAを取得しています。
いくつかの企業で通信事業のアナリストとしての経験を積み、Googleに入社したのは2004年、欧州・中東・アフリカ市場の事業開発責任者となり、最終的には実質NO.2の幹部にのぼり詰めました。
そして、その経験と実績を買われ、2014年にソフトバンクにバイスチェアマンとして迎えられます。
これは、孫正義社長の後継者候補としての入社だったと言われ、実際に翌2015年にはソフトバンク代表取締役副社長およびヤフー取締役会長に就任したことからも、孫氏がアローラ氏を高く評価していたことがわかります。
残念ながら2016年、アローラ氏は取締役を退任しますが、その際に孫氏は「彼は当社に世界レベルの事業遂行スキルを持ち込んでくれました」「事業戦略とその実行において比類なきスキルを持った非常に稀なリーダーです。グローバルビジネスのCEOとなりえる人物」というコメントを発表しました。(ソフトバンク公式サイト「当社代表取締役副社長 ニケシュ・アローラの顧問就任について 孫 正義は当社代表取締役社長として事業を継続」より)
現在のアローラ氏は、サイバーセキュリティ企業パロアルトネットワークスの会長兼CEOを務めています。
1-3.サン・マイクロシステムズ共同創業者 ヴィノド・コスラ
大手コンピュータ機器メーカーであるサン・マイクロシステムズの共同創業者、ヴィノド・コスラ氏はインド工科大学デリー校の卒業生です。
電気工学の学士号を取得後、カーネギーメロン大学で医用生体工学の修士号を、スタンフォード大学でMBAを取得しました。
その後、スタンフォード大学の同窓生らとともにサン・マイクロシステムズを設立、CEOに就任しました。
退任後はコスラ・ベンチャーズを設立し、ベンチャーキャピタリストとして生物医学やロボット工学などの分野に投資しています。
ちなみに彼は、Forbes誌の「アメリカでもっとも裕福な400人」2021年版において、ジョージ・ソロスと並んで92位(資産86億ドル)にランクされたビリオネアとしても有名です。
1-4.Twitter CEO パラグ・アグラワル
もっとも最近注目を集めたインド工科大学卒業生といえば、2021年11月に37歳でTwitter社のCEOに就任したパラグ・アグラワル氏でしょう。
彼はインド工科大学ボンベイ校出身で、卒業後はスタンフォード大学でコンピュータサイエンスの博士号を目指していましたが、取得前の2011年にTwitter社に入社しました。
Twitterでは主にAIと機械学習専門のエンジニアとして頭角をあらわし、2017年には早くも最高技術責任者(CTO)に任命されました。
たとえば、機械学習にバイアスがかかってしまう問題に取り組み、また分散型SNS「BlueSky」の開発も主導しています。
アグラワル氏は学生時代からその天才を発揮していました。
2001年、高校生のときに国際物理オリンピックで優勝し、インド工科大学の入学試験「JEE」では77位の成績をおさめたそうです。
2.インド工科大学に天才が多い理由
このように、IT企業を中心に世界的に活躍する人材を多く輩出しているインド工科大学ですが、ではなぜ多くの「天才」と呼ばれる人材を育てることができるのでしょうか?
その理由としては、以下の5つが考えられます。
2-1.特異な入学試験
まず、インド工科大学の試験は独特です。
「IIT-JEE」と呼ばれ、以下の2段階のテストを受けなければなりません。
・JEE Main:インドで大学入学を目指す学生が受ける、比較的難易度の低い試験
毎年2回実施され、科目は数学、物理、化学
→ここで上位の成績をおさめた人が、「JEE Advanced」の受験資格を得る
・JEE Advanced:「JEE Main」をクリアした者が受けられる上級試験
インド工科大学のボンベイ校、デリー校、マドラス校など7校が共同で年に1回実施
科目は数学、物理、化学
→成績上位者から順番にインド工科大学23校の中から希望の大学、学部に入学できる
このテストが難しいのは、「不正解だと減点される」ことです。
正解した問題が加点されるのは一般的なテストと同様ですが、間違えた問題については「1問あたり−◯点」と決められた点数分がマイナスになるのです。
しかもインド工科大学の定員数は全受験者の1〜2%であるため、ほぼ満点に近い点数をとった者だけしか入学資格を得られません。
つまり、インドでも優秀な学生のうちさらに選りに選られた超エリートのみが、IITの学生になれるというわけです。
2-2.高い教育水準
このような厳しい試験を通過して入学した学生は、インドでも最高の教育水準を誇る環境で学び、研究することができます。
というのも、インドには「インド工科大学法」という法律があり、これによりIITが「国家重要機関」に認定されているのです。
そのためインド政府がIITの教育水準を高めることに注力していて、国の予算も投入されています。
他の工科大学への助成金は年間200万〜400万ドル程度なのに対して、IITの場合は年間1,900万〜2,700万ドルにものぼるそうです。
インド工科大学では産学連携もさかんです。
日本企業も、NTT-ATとグワハティ校、スズキとハイデラバード校などが提携しています。
これにより、学術的な研究だけでなく実践的な視点も得られるなど、学生の知見をより広げることにも繋がるでしょう。
2-3.デュアルディグリー制度
また、インド工科大学では、4年間で学士号を得る日本の大学と同様なプログラムもありますが、それとは別に5年間で学士号と修士号を並行して取得する「デュアルディグリー」というプログラムも取り入れています。
これを選択した学生は、通常は「学部4年+大学院修士課程2年=6年」のカリキュラムを5年で修了しなければなりません。
日本の大学生のように、入学後は遊びやアルバイト三昧で過ごすことはできず、在学中に勉学に集中する必要があるため、卒業生は非常に優秀だと言われています。
2-4.全寮制
実はインド工科大学では、学内にホステルがあり、学生のほとんどはそこで生活します。
キャンパスには図書館や研究施設はもちろん、病院やショッピングセンターなどもあり、いざとなれば学外に出なくても生活できる環境が揃っています。
そのため、効率的に勉強と研究に集中できるのです。
また、学生同士の結びつきも強く、自治会や研究グループなどもさかんに活動しています。
学生たちは、インド工科大学生であることに愛着と誇りを持ちやすく、そのことも優秀な学生を育む結果につながっていると言えそうです。
2-5.カースト制度
最後に、インド独自の「カースト制度」が関係しているという説もあります。
カースト制度はインドの伝統的な身分制度で、階級によって結婚や職業選択などさまざまなことが制限されていました。
現在は、国家としてはカーストを廃止していますが、実際には国民生活に根強く残っていると言われます。
カーストでは職業選択の自由はなく、基本的には親の職業を世襲するため、貧しい家庭の子どもはその環境からなかなか抜け出すことができませんでした。
が、IT産業に限っては新しい職業で、カーストに縛られないとされています。
そのため、カースト下位の家系や貧しい家庭に生まれた優秀な子どもが、そこから這い上がるためにIT業界に集中するのです。
中でも彼らが目指す最高峰のひとつが、インド工科大学です。
ここを卒業すれば、欧米の大手IT企業から年俸1,000万〜2,000万円でリクルートされるのも夢ではありません。
つまり、IITにはカーストにかかわらずインド国内の天才が集まってくるというわけなのです。
3.まとめ
いかがでしたか?
インド工科大学の天才たちと、それを生み出す秘密についてよくわかったかと思います。
では最後に、記事のポイントをまとめましょう。
◎インド工科大学には天才と呼ばれる人材が多く、特にIT産業で世界をリードしている
◎インド工科大学が多くの天才を輩出することができる理由は、
・特異な入学試験
・高い教育水準
・デュアルディグリー制度
・全寮制
・カースト制度
これを踏まえて、あなたがインド工科大学についてより深く理解できるよう願っています。