「インドはプログラミング教育がさかんだと聞くが、実際はどうなんだろう?」
「世界でもレベルが高いと言われるインド人プログラマーを採用したいが、どうすればいい?」
そのような疑問や希望を持っている日本企業も多いかと思います。
たしかに現在、インドはIT大国として知られています。
・インドのエンジニア数は約212万人で、アメリカ、中国に次ぐ世界第3位
・2005年から小学校でもコンピュータサイエンスが必修科目
・国内に工科大学が3,495校(2015年)もある
・STEM分野の学士項を取得した学生は260万人で、中国に次ぐ世界第2位
そのため、世界中でインド人のプログラマーなどIT人材は引く手あまたです。
日本企業でも、インド人エンジニアの採用を積極的に進めるところも出てきています。
そこでこの記事では、インドのプログラミング、プログラマーについて知っておくべきことをまとめました。
まず最初に、現状がどうなっているのかを、データを交えて解説します。
◎インドのプログラミング事情
◎インドのプログラミング教育
その上で、インド人プログラマーの採用についても説明します。
◎インド人プログラマーの採用
・メリット
・注意点
・採用方法
最後まで読めば、知りたいことがわかるでしょう。
この記事で、あなたの会社が優秀なインド人プログラマーを採用できるよう願っています。
1.インドのプログラミング事情
インドはIT分野での躍進が著しく、プログラミング教育も進んでいます。
まずはその現状を知っておきましょう。
1-1.インドはいまやIT大国
インドはいまや世界有数の「IT大国」と位置づけられています。
南部の都市・バンガロールは「インドのシリコンバレー」と呼ばれ、GAFA(Google、apple、Facebook・現Meta、Amazon)やMicrosoft、Oracle、Intel、Siemens、SAP、IBMなどIT関連トップ企業の多くが拠点をおき、開発に取り組んでいます。
IT人材も豊富です。
ヒューマンリソシアが2020年に発表した「92カ国をデータで見みるITエンジニアレポートvol.1 世界各国のIT技術者数まとめ」によると、インドのエンジニア数は約212万人で、アメリカ、中国に次ぐ世界第3位を誇っています。
【国別のIT技術者数まとめ(トップ10位)】
順位 | 国・地域 | IT技術者数 |
1 | アメリカ | 477.6万人 |
2 | 中国 | 227.2万人 |
3 | インド | 212.0万人 |
4 | 日本 | 109.0万人 |
5 | イギリス | 93.3万人 |
6 | ロシア | 88.7万人 |
7 | ドイツ | 84.1万人 |
8 | ブラジル | 75.7万人 |
9 | 韓国 | 66.3万人 |
10 | フランス | 56.3万人 |
出典:ヒューマンリソシア「92カ国をデータで見みるITエンジニアレポートvol.1 世界各国のIT技術者数まとめ」
スタートアップ企業も多く、2019年時点で約9,000社、上記と同じくアメリカ、中国に次ぐ第3位でした。
さらに2021年には、1年間で2,250社以上が創業しました。
現・モディ政権は、2014年から「デジタル・インディア」という政策を掲げて、インドのIT化とIT産業の成長を後押ししています。
1-2.インドのエンジニアは世界的に高評価
インドのエンジニアは、数が豊富なだけでなく技術的にも優秀だとして、世界中から注目されています。
中でも飛びぬけて評価が高いのが、国立インド工科大学(IIT)の学生です。
GAFAなどは、新卒のIIT学生に対して年俸1,500万円といった高額でオファーすることもあるそうです。
IIT出身者には大手IT企業のCEOに就任する者も多く、Googleのサンダー・ピチャイCEOもIIT卒業ということが話題になりました。
2.インドのプログラミング教育
また、インドではプログラミング教育もさかんです。
その現状はどのようになっているでしょうか?
2-1.初等教育からプログラミングが必修
「諸外国のプログラミング教育を含む情報教育カリキュラムに関する調査 -英国,オーストラリア,米国を中心として-」
(太田 剛・森本容介・加藤 浩/日本教育工学会論文誌 40(3),197-208,2016)という論文では、主要国のプログラミング教育の状況を表にまとめています。
以下を見てください。
出典:「諸外国のプログラミング教育を含む情報教育カリキュラムに関する調査 -英国,オーストラリア,米国を中心として-」
(太田 剛・森本容介・加藤 浩/日本教育工学会論文誌 40(3),197-208,2016)
これを見ると、インドはGrade 3=小学校3年生から「コンピュータ・サイエンス」が必修となっています。
授業では、プログラミングはもちろん、小学校高学年でアルゴリズムやフローチャート、中学校ではHTMLを使ったWebコンテンツ作成、アプリケーション作成などを学びます。
ちなみにプログラミング言語は、Java、.NET、C、C++が主流のようです。
注目はこのカリキュラムが始まった年で、調査9か国のうち2番目に早い2005年からスタートしています。
2015年からは、政府が6~18歳を対象にSTEM人材を育成するためのプロジェクト「RAA(Rashtriya Avishkar Abhiyan)」を実施するなど、国を挙げてICT教育に力を入れているのです。
2-2.工科大学が多い
1章でインド工科大学について触れましたが、インドにはIIT以外にも工科大学が非常に多いという特徴があります。
2015年時点で実に3,495校もの工科大学がありました。
日本の全大学数は、2021年時点で788校ですから、比較するといかにインドで工科系教育がさかんかがわかるでしょう。
2016年の世界経済フォーラム(WEF)の調査では、STEM分野の学士号を取得した学生の数は、1位が中国で470万人、インドは2位で260万人にものぼりました。
それに対して、日本は19万5,000人と、インドとは13倍以上の開きがあります。
このようにインドには、小学校から大学まで一貫して、プログラミングなどのITC教育を受けられる環境が整っていることが、IT大国として躍進する理由でしょう。
3.インド人プログラマーの採用
インド人が早期からプログラミング教育を受けて、優秀なIT人材として育成されていることはわかりました。
近年は日本企業もインド人エンジニアに注目し、採用活動に乗り出しています。
そこで、インド人プログラマーの採用に関しても考えてみましょう。
3-1.インド人プログラマーを採用するメリット
まず、日本企業がインド人プログラマーを採用するメリットとは何でしょうか?
それは主に以下の3点が挙げられます。
3-1-1.モチベーションが高い
インド人エンジニアは、仕事へのモチベーションが非常に高いと言われています。
というのも、インドは経済成長を続けているとはいえ、国民全体の収入はまだまだ低水準です。
経済産業省の「IT人材に関する各国比較調査 結果報告書」(2016年)によれば、インドでIT産業に携わる人の平均年収は533万円、国民全体の平均年収の9倍以上となっています。
出典:経済産業省「IT人材に関する各国比較調査 結果報告書」(2016年)
そのため「IT産業に従事したい」という意欲をもって就職する人が多いのです。
日本人的な「会社へのロイヤルティ」とは異なりますが、「自分のスキルを高めて、より高報酬で仕事をしたい」というモチベーションで仕事に臨むため、高い成果が期待できます。
3-1-2.英語力が高い
インドでは、ヒンディー語のほかに英語も公用語となっています。
都市部では、むしろ英語のみを話す人も増えているようです。
そのため、インド人エンジニアにも高い英語力を持つ人が多いのが実情です。
一方日本企業では、英語でビジネスができる人材は残念ながら多いとは言えません。
インド人スタッフが入ってくれれば、英語圏とのビジネスで橋渡し役を担ってもらうことができますので、ビジネスチャンスも広がるでしょう。
3-1-3.人材が豊富
「1-1.インドはいまやIT大国」にもあげたヒューマンリソシアの調査では、インドのIT技術者は212万人で、日本の109万人と比べると倍近い人数を誇っています。
【国別のIT技術者数まとめ(トップ10位)】
順位 | 国・地域 | IT技術者数 |
1 | アメリカ | 477.6万人 |
2 | 中国 | 227.2万人 |
3 | インド | 212.0万人 |
4 | 日本 | 109.0万人 |
5 | イギリス | 93.3万人 |
6 | ロシア | 88.7万人 |
7 | ドイツ | 84.1万人 |
8 | ブラジル | 75.7万人 |
9 | 韓国 | 66.3万人 |
10 | フランス | 56.3万人 |
出典:ヒューマンリソシア「92カ国をデータで見みるITエンジニアレポートvol.1 世界各国のIT技術者数まとめ」
また、そのスキルも高いことがわかっています。
経済産業省の「IT人材に関する各国比較調査 結果報告書」(2016年)では、インド人IT人材のスキルレベルは、調査8か国中アメリカに次ぐ第2位です。
出典:経済産業省「IT人材に関する各国比較調査 結果報告書」(2016年)
特に、レベル4の「高度な知識・技能を有している人材」と最上位のレベル7「国内のハイエンドプレーヤーかつ世界で通用するプレーヤー」はどちらも1位となっています。
つまりインドは、エンジニアの質・量ともに世界トップレベルというわけです。
3-2.インド人プログラマーを採用する際の注意点
このように優秀なインド人プログラマーですが、採用を考える際には注意しなければならない点があります。
それは以下の2点です。
3-2-1.日本語が通じる人は少ない
インド人は、英語を話せる人は多いですが、日本語を理解する人はまだ少ないのが実情です。
社内公用語が英語である企業なら問題ないのですが、日本語が必須の職場であれば、以下のいずれかの対応が必要になります。
・日本語が話せる人材に絞って探す
・入社後に日本語教育を施す
・通訳してくれるブリッジエンジニアを用意する
ただ、「ヒンディー語と日本語は、文法も発音も近いので習得しやすい」というインド人の声もあるので、一時的にブリッジエンジニアを配しつつ、日本語を覚えてもらうという方法もとれるでしょう。
3-2-2.残業や業務外の仕事があまり歓迎されない
これはどの国との間でも生じる問題ですが、インドと日本も当然ながら仕事観や企業文化が異なります。
インド人は、日本人に比べて個人主義の傾向が強く、会社への帰属意識は稀薄です。
そのため、残業や休日出勤が当然のように前提となっている働き方はあまり歓迎されません。
また、業務外の仕事を「これもやっておいて」などとなあなあで任せようとするのも、不満につながる恐れがあります。
働き方に関しては、採用時にあらかじめ説明をして納得を得た上で、契約に明記しておく必要があるでしょう。
3-3.インド人プログラマーの採用方法
では、ここまでの解説を踏まえて「やはりインド人プログラマーを採用したい」と希望する企業は、どのような方法で採用活動を行えばよいでしょうか?
それには以下のような複数の選択肢があります。
3-3-1.紹介会社を利用する
まず、外国人のエンジニアを扱う人材紹介会社があります。
希望する人材や採用条件を伝えれば適した人を探してもらえるため、企業側の採用工数は少なくて済むのが利点です。
ただ、採用が決まれば紹介会社への成功報酬というコストが発生するため、予算次第で利用を検討しましょう。
3-3-2.求人サイトを利用する
もうひとつ、求人サイトも利用しやすい方法です。
大手求人サイトで外国人エンジニアの登録を受け付けているところもありますし、外国人エンジニアに特化した求人サイトもあります。
掲載料はかかりますが、採用時成功報酬は必要ないため、紹介会社よりも低コストで採用することができます。
が、紹介会社と比較すると、人材の質が担保されないので、応募者のスキルや人柄の見極めが必要です。
3-3-3.リファラル採用をする
社内にすでにインド人エンジニアがいる場合や、インド現地とつながりがある場合は、その紹介=リファラル採用という方法もあります。
リファラルであれば、あらかじめどのような人材かを把握しやすく、また採用コストも発生しないというメリットがあります。
が、大量採用には向かないことと、そもそもインド人エンジニアにつてがなければ成立しないことが難点だと言えるでしょう。
まとめ
いかがでしたか?
インドのプログラミング事情について、知りたいことがわかったかと思います。
ではあらためて、この記事の内容をまとめてみましょう。
◎インドのエンジニア数は約212万人で、アメリカ、中国に次ぐ世界第3位
◎プログラミング教育もさかんで、2005年から小学校でもコンピュータサイエンスが必修科目
◎国内に工科大学が3,495校(2015年)もあり、STEM分野の学士項を取得した学生は260万人
◎インド人プログラマーを採用するメリットは、
・モチベーションが高い
・英語力が高い
・人材が豊富
◎インド人プログラマーを採用する際の注意点は、
・日本語が通じる人は少ない
・残業や業務外の仕事があまり歓迎されない
◎インド人プログラマーを採用する方法は、
・紹介会社
・求人サイト
・リファラル採用
以上を踏まえて、あなたの会社が希望通りの優秀なインド人プログラマーを採用できるよう願っています。