「優秀なインド人エンジニアを採用したいが、年収はどの程度が適当か?」
「インドでオフショア開発したいが、現地のエンジニア単価の相場はいくらだろう?」
ソフトウエア開発に関して、そのような疑問を持っている方は多いでしょう。
近年、インドには優秀なIT人材が豊富だとして、世界中がインド人エンジニアを求めています。
そのため、アジア諸国の中でも年収が上昇しつつあり、中には1,000万円以上の報酬を得る者も増えているのが現状です。
ただ、インドのエンジニアは収入格差が非常に大きく、年収の中央値は152万円と決して高くはありません。
優秀な人材が、リーズナブルな報酬で雇用できる可能性は高いでしょう。
そこでこの記事では、インドのエンジニアの年収について、さまざまな角度から調べてみました。
まず最初に、リアルな現状を解説します。
◎インドのエンジニアの年収
さらに、比較対象を提示しますので、費用感をつかんでください。
◎インドの一般的な年収
◎その他の国のエンジニアの年収
◎インドにおける「給与・報酬」の実情
最後まで読めば、知りたいことがよくわかるでしょう。
この記事で、あなたの会社が優秀なインド人エンジニアを適正な年俸で採用できるよう願っています。
1.インドのエンジニアの年収
近年、世界のIT産業においてその優れた能力に注目が集まっているのが、インドのエンジニアです。
日本のIT企業でも、インド人の採用を積極的に検討する企業が増えています。
となると、その給与水準もおのずと上昇するのが現実です。
では、インドのエンジニアの年収事情はどうなっているのでしょうか?
1-1.インドのエンジニアの平均年収は「533万円」
ズバリ結論を言えば、インドのエンジニアの平均年収は「533万円」です。
経済産業省の「IT人材に関する各国比較調査 結果報告書」(2016年)によると、インドのIT人材全体の平均年収は533万円でした。
ただこれは2016年のデータで、インドはコロナ禍以前は毎年6~8%程度GDPが伸びて経済成長を続けていますので、現在(2022年)ではもっと上がっているかもしれません。
また、インドではエンジニアの年収はその能力によって大きな開きがあります。
下流工程に携わるレベルの高くない者であれば120万円程度から、一方で上流工程でマネジメントなどを手掛けることができる優秀な人材は1,000万円以上にのぼるケースもあります。
そのため、前術の経産省の調査によれば、年収の中央値は「152万円」と平均値とは大きく乖離しています。
この中央値については、「3-3.インドのエンジニアの年収の中央値は「152万円」」でくわしく解説しますので、そちらも参照してください。
ちなみにこの経産省の調査では、日本は598万円ですので、インドとそれほど大きな差はないようです。
出典:経済産業省「IT人材に関する各国比較調査 結果報告書」(2016年)から編集
1-2.中には3,000万~4,000万円の高額オファー例も
ただ、インドのエンジニアには世界中のIT企業が注目していて、提示される年俸も高騰し続けています。
特に引く手あまたなのが、インド工科大学(IIT)の卒業生です。
優秀な学生は、新卒の年俸1,500万円、1,700万円といった高額を提示され、Google、apple、Facebook(現・Meta)などの大手からオファーがあると言います。
中には、Oracle社が4,000万円という最高額を提示したというトピックがセンセーションを巻き起こした例もありました。
GoogleのCEOであるサンダー・ピチャイも、IITの出身です。
日本でも、IITなどインドの難関工科大学卒業の学生には、初任給50万円からオファーする、といった企業もあり、今後も高水準の給与額が続くと予想されます。
2.その他の国のエンジニアの年収
さて、インドのエンジニアの年収について、平均値は日本に近いですが、優秀な人材には破格の年俸が提示されることが分かりました。
では次に視点を変えて、その他の国々のエンジニアの年収と比較してみましょう。
2-1.平均年収の比較
前出の経産省のデータをもう一度見てみましょう。
出典:経済産業省「IT人材に関する各国比較調査 結果報告書」(2016年)から編集
これによると、調査8か国のうちインドのIT人材の年収は日本に次ぐ3番目で、中国・韓国よりも高くなっています。
ということは、インドのエンジニアの収入は、全般的に中国・韓国よりも高いと捉えてよいのでしょうか?
それについては、次の項を見てください。
2-2.インドのエンジニアは収入格差が大きい
実は、インドは収入格差が非常に大きい社会構造になっています。
「1-1. インドのエンジニアの平均年収は「533万円」」で前述したように、エンジニアの年収も、能力によって大きな格差があります。
以下はまた経産省の「IT人材に関する各国比較調査 結果報告書」からのデータです。
「各国IT人材の年収分布①」を見ると、インドの場合、年収300万円以下に人数が集中しています。
一方で、2,000万円台後半以上の年収を得ている人は、調査8か国中で最も多いのです。
出典:経済産業省「IT人材に関する各国比較調査 結果報告書」(2016年)から編集
ちなみに日本は500万円前後がボリュームゾーン、アメリカは1,000万~2,000万円の間に集中しています。
これを見ると、インドのエンジニアの年収は、「平均533万円」という統計ほど高くない印象を抱くでしょう。
2-3.インドのエンジニアの年収の中央値は「152万円」
この年収格差について、さらにくわしく見てみましょう。
以下の「各国IT人材の年収分布②」は、同じく経産省「IT人材に関する各国比較調査 結果報告書」からのデータで、年収分布の幅と中央値を比較しています。
これによると、インドの年収分布は非常に幅広く、ただしほとんどの人はその中でも低いレベルに集中しています。
そして、中央値はなんと「152万円」です。
「平均年収533万円」とはかなり乖離してしまっています。
出典:経済産業省「IT人材に関する各国比較調査 結果報告書」(2016年)から編集
つまりインドのエンジニアの年収は、実感では533万円もない人が多く、まだまだ世界レベルでは低年収で働いている人材が多数を占めるというわけです。
3.インド人エンジニアを採用する際のポイント
ここまで、インドのエンジニアの年収についてさまざまな視点から比較してきました。
が、この記事を読んでいるのは、「インド人エンジニアを採用したい」と考えている企業の方も多いでしょう。
そこで最後に、インド人エンジニアを採用する際に、年収に関して注意すべきポイントをいくつか挙げておきましょう。
3-1.仕事を選ぶ基準は「給与・報酬額」
一般的にインド人は、仕事に対する高いモチベーションを持っています。
そのかわり、自分の仕事に見合った対価を重視する傾向があります。
仕事を選ぶ基準を給与額・報酬額においていると言ってもいいでしょう。
特に前述したように、経済格差が大きいインドにおいて、エンジニアは国内平均年収の9倍もの年収が得られる職業であり、その期待をもって就業しています。
出典:経済産業省「IT人材に関する各国比較調査 結果報告書」(2016年)
そのため、もし自分のあげる成果に対して報酬が見合っていないと感じれば、年収アップを狙って転職も考えます。
それを避けるには、先方が納得するような評価基準を示した上で、適切な給与を決める必要があるのです。
3-2.転職時には給与が上がるのが一般的
また、インドでは「転職時には給与が上がる」のが一般的です。
日本では、転職で一時的に給与が下がるケースもよくありますが、インドの場合、逆に20~30%アップする例もあるそうです。
そのため、インド人はより高報酬の仕事があれば、積極的に転職する傾向があります。
逆に言えば、インド人転職者を中途採用をする場合には、「前職よりも高い年収を」と希望される可能性があるのです。
採用時には、「この仕事・このスキルに対しては、自社ではいくらまで支払えるか」を明確にしておきましょう。
3-3.評価基準を明確化する必要がある
実際にインド人エンジニアを雇用したら、注意したいのが評価基準です。
というのも、日本企業とインド人材との間に、「何を評価しているか・されているか」の認識のずれがあるからです。
日本貿易振興機構(JETRO)の「在日インド高度人材に関する調査報告書」では、インド人を雇用している日本企業と、日本で働くインド人材の双方にアンケートをとった結果、以下のような結果が出ています。
【企業回答】
貴社が最も重視する評価指標(企業回答 n=27)
評価指標 | 回答割合 | |
1 | チームとしての成果 | 78% |
2 | 個人としての成果 | 70% |
3 | 成果に至るまでのプロセス | 47% |
4 | チームワーク | 47% |
5 | リーダーシップ | 22% |
6 | コミュニケーション力 | 13% |
7 | チームマネジメント | 9% |
【インド人材回答】
企業に評価されていると考える評価指標(人材回答 n=56)
評価指標 | 回答割合 | |
1 | チームとしての成果 | 70% |
2 | 成果に至るまでのプロセス | 51% |
3 | コミュニケーション力 | 40% |
4 | リーダーシップ | 40% |
5 | チームワーク | 36% |
6 | チームマネジメント | 30% |
7 | 個人としての成果 | 25% |
出典:日本貿易振興機構「在日インド高度人材に関する調査報告書」(2020年)
企業側は、個人の成果を評価しているつもりでも、インド人従業員はあまり評価されているとは感じていません。
このギャップを埋めるためには、評価基準を明確に定め、インド人従業員が納得するような評価制度を確立する必要があるでしょう。
まとめ
いかがでしたか?
インドのエンジニアの年収について、費用感がつかめたかと思います。
ではあらためて、記事の内容を振り返りましょう。
◎インドのエンジニアの年収は、平均「533万円」、中央値「152万円」
◎インド人エンジニアを採用する際のポイントは、
・仕事を選ぶ基準は「給与・報酬額」
・転職時には給与が上がるのが一般的
・評価基準を明確化する必要がある
以上を踏まえて、あなたの会社が優秀なインド人エンジニアを採用できるよう願っています。