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フィリピンのオフショア開発|特徴、メリット・デメリット、費用を解説

フィリピンのオフショア開発|特徴、メリット・デメリット、費用を解説

更新日 : 2023.12月.04

「オフショア開発先を探しているけれど、フィリピンはどうだろう?」
「フィリピンのオフショア開発は費用が安いと聞くけれど、相場はどのくらい?」

オフショア開発を検討中の企業には、そのような疑問を持っている方も多いでしょう。

フィリピンでのオフショア開発は、日本でも注目を集めています。

それは、以下のようなメリットがあるからです。

・費用が安い
・英語力が高い
・時差が少ない

ただ、一方で以下のようなデメリットもあるため、委託する際には注意が必要です。

・日本語が通じづらい
・進捗を細かくチェックしなければならない
・政情・治安に不安がある

そこでこの記事では、フィリピンでのオフショア開発について知っておきたいことをまとめました。

まず最初に、現状を整理しておきましょう。

◎フィリピンでのオフショア開発の現状
◎フィリピンでのオフショア開発の特徴
◎フィリピンでのオフショア開発のメリット
◎フィリピンでのオフショア開発のデメリット

これらを踏まえて、実際にオフショア開発を委託するために必要な情報をお伝えします。

◎フィリピンでのオフショア開発の費用目安
◎フィリピンにオフショア開発を委託する手順
◎フィリピンにオフショア開発を委託する際の注意点

最後まで読めば、フィリピンでのオフショア開発についてよく理解できるはずです。

この記事で、あなたの会社のオフショア開発が成功するよう願っています。

1.フィリピンでのオフショア開発の現状


フィリピンは近年、ベトナムに次いで日本からのオフショア開発で注目されている国です。

日本最大級のオフショア開発の選定先支援サイトオフショア開発.comが発表したオフショア開発白書 2021年版によると、同サイトを利用した企業のうち、12%がフィリピンを委託先に選んでいます

出典:株式会社Resorz「オフショア開発白書 2021年版

また、フィリピンは国を挙げてIT産業に力を入れているため、エンジニアのスキルも高いといえます。

国民の平均年齢が23~24歳と若いため、エンジニアにも若くモチベーションの高い人材が豊富です。

その一方で、人件費などの費用は安く抑えられています

特に、首都マニラよりも物価水準が低いセブは、フィリピンの中でもコストメリットが大きいためオフショア開発では人気が高いエリアです。

2.フィリピンでのオフショア開発の特徴

次に、フィリピンでのオフショア開発の特徴を、他国との比較を交えて見ていきましょう。

2-1.特徴

フィリピンの公用語は、フィリピン語と英語です。

東南アジア諸国の中でも、ネイティブレベルの英語力を持つ人が多く、また大学卒業者も比較的多いとされています。

エンジニアも同様で、大卒で英語に長けた人材が豊富なため、オフショア開発では日本よりも欧米からの案件が多いのが特徴です。

フィリピン人エンジニアは、Web系言語(HTML、CSS、JavaScript、PHPなど)が得意な人が多いと言われ、またもうひとつ特徴的なのは、デザイン分野に秀でていることです。

そのため、WEBサイトのデザイン、スマホアプリやソーシャルゲームなどの開発には強みを発揮するでしょう。

2-2.他国との比較

では、フィリピンでのオフショア開発は、他国と比較してどうなのでしょうか?

コストや特徴などを以下の表にまとめてみました。

ITスキルのデータは残念ながらありませんが、他国に劣るものではありません。

さらに、特に際立つのは人月単価の安さで、コストメリットは大きいと言えそうです。

言語人月単価の相場特徴ITスキルの
平均レベル
フィリピンフィリピン語、英語21万~30万円・デザイン力に優れる
・スマホアプリ、ソーシャルゲームなどの開発が得意
──
インドヒンディー語など、英語30万~60万円・エンジニアのスキルが高い
・組み込み系の開発が得意
3.9
ベトナムベトナム語
※英語、日本語も通じる場合あり
25万~40万円・近年最もオフショア開発の人気が高い
・スマホアプリなど小中規模の開発が得意
3.31
中国中国語、英語
※日本語も比較的通じやすい
35万~55万円・日本とのオフショア開発の経験が豊富
・基幹系、情報系システムの開発が得意
3.58
インドネシアインドネシア語
※英語も比較的通じやすい
24万~32万円・スマホアプリの開発が得意
・広いジャンルの案件に対応できる
3.43

※ITスキルの平均レベルは、経済産業省「IT人材に関する各国比較調査 結果報告書」(2016年)より引用

 調査各国のアンケート回答者のITスキルを以下の7段階にレベル分けした平均値

 【レベル1】 最低限求められる基礎知識を有している人材
 【レベル2】 基本的知識・技能を有している人材
 【レベル3】 応用的知識・技能を有している人材
 【レベル4】 高度な知識・技能を有している人材
 【レベル5】 企業内のハイエンドプレーヤー
 【レベル6】 国内のハイエンドプレーヤー
 【レベル7】 国内のハイエンドプレーヤーかつ世界で通用するプレーヤー

3.フィリピンでのオフショア開発のメリット

フィリピンでのオフショア開発の特徴がわかりました。

が、これだけではまだ「フィリピンに開発を委託すべきかどうか」の判断は難しいでしょう。

そこで、フィリピンならではのオフショア開発のメリットを挙げてみました。

それは主に以下の3点です。

・費用が安い
・英語力が高い
・時差が少ない

では、それぞれ説明していきます。

3-1.費用が安い

まず第一に挙げられるのは、開発費用の安さです。

オフショア開発費用のほとんどは人件費で、「エンジニアの人月単価✕開発工数」で算出しますが、フィリピンの人月単価は21万~30万円程度と東南アジア諸国でもかなり低い水準となっています。

特に、前述したように首都マニラよりも物価が安いセブは、人件費も低く抑えられるため、オフショア開発の拠点として人気です。

ただ、欧米からの開発案件が多いフィリピンでは、近年エンジニアの人件費も徐々に上昇しています。

今後はコストメリットも小さくなる可能性がありますので、「フィリピン=安い」と思い込まずに見積もりを慎重に確認しましょう。

3-2.英語力が高い

フィリピン人の英語力は非常に高く、オフショア開発も英語ベースで行われることが多いようです。

日本企業側にも英語人材がいれば、コミュニケーションは非常にスムーズにとれるでしょう。

そのため、日本企業が海外進出を考える際や、ホームページやアプリの英語化、越境ECの構築といったグローバルな開発に最適です。

ただ、その分日本語話者が少ないこと、日本語学習への意欲が高くはないことなどが課題になっているのも事実です。

これについては4-1.日本語が通じづらいでくわしく説明しますので、あわせて読んでください。

3-3.時差が少ない

オフショア開発では、日本と現地との時差が重要なポイントです。

連絡ひとつ取るのにも、時差が大きければ時間調整に困難が生じます。

たとえば、急遽相談したいことができても、相手の国は深夜で連絡がつかなかったり、リモートミーティングを行う際には、どちらかの就業時間に合わせると他方は早朝や深夜になってしまったりといった問題が起きがちなのです。

その点フィリピンは、日本との時差が1時間とわずかです。

ビジネスアワーがほぼ一致しているため、コミュニケーションのストレスがありません。

また、物理的な距離も近く、飛行機で4~5時間あれば現地に行くことができます。

国内出張の感覚で行き来できるのも、大きなメリットと言えるでしょう。

4.フィリピンでのオフショア開発のデメリット

一方で、フィリピンでのオフショア開発には以下のようなデメリットもあります。

・日本語が通じづらい
・進捗を細かくチェックしなければならない
・政情・治安に不安がある

それぞれ説明します。

4-1.日本語が通じづらい

フィリピンでは、ほとんどの人が英語でコミュニケーションできる一方で、日本語話者は多くはありません

正直なところ、フィリピンの企業やエンジニアにとっては、ビジネスのターゲットは欧米が中心であって、日本はその後塵を拝している状況です。

そのため、日本語習得に対しても熱意は低めです。

以下の表を見てください。

独立行政法人 国際交流基金「2018年度海外日本語教育機関調査結果から、国別の日本語学習者数のランキングです。

【2018年 各国・地域の日本語学習者数】

出典:独立行政法人 国際交流基金による「2018年度海外日本語教育機関調査結果

日本からのオフショア開発がさかんなベトナムでは、日本語学習者が急増していて、2015年から2018年までの3年間で1.7倍にも増えました。

中国は、日本とのオフショア開発の歴史がもっとも長い国のひとつで、日本語学習者数も1位をキープしています。

それに対して、フィリピンは9位と微妙な位置で、学習者数もあまり増えていません。

このように日本語が通じづらい環境であるため、フィリピンでのオフショア開発では英語がわかるブリッジエンジニアを日本側から用意するか、逆に日本語がわかる人材をフィリピン側におくなど、コミュニケーションコストがかさむというデメリットがあります。

4-2.進捗を細かくチェックしなければならない

フィリピンのエンジニアの能力が高いのは事実ですが、一方でルーズな一面もあります。

時間や期限を守らなければいけないという意識が日本人より低いため、スケジュール管理が難しいのが難点です。

また、「報・連・相」の習慣もないので、進捗報告や相談をせずに勝手に進めてしまうといったケースもあります。

そのため、フィリピンにオフショア開発を委託する際には、開発プロセスの各段階で細かく確認、チェックが必要です。

4-3.政情・治安に不安がある

また、フィリピンには政情不安もあります。

フィリピン共産党の軍事部門である「新人民軍(NPA)」がフィリピン政府と対立し、長年にわたってテロ行為、市民への攻撃、恐喝、襲撃、誘拐などを繰り返す紛争状態が続いているのです。

日本人や日本企業もターゲットとなっています。

2014年には日系企業の倉庫や農園が襲撃を受け、2018年には同じく日系企業の農園で農薬散布中の小型飛行機が銃撃され,操縦士が殺害される事件もありました。

外務省の「危険情報」でも全土が「危険」と指定され、オフショア開発の中心である首都マニラやセブは「危険レベル1:十分注意が必要」となっています。

もし紛争が激化すれば、開発が中断されたり、継続不可能になるリスクがあることは知っておくべきでしょう。

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5.フィリピンでのオフショア開発の費用目安

前述したように、フィリピンでのオフショア開発費用は、アジア諸国の中でも低めの水準になっています。

エンジニアの人月単価の相場は21万~30万円程度で、他国と比較すると以下のようにそのコストメリットがよくわかります。

人月単価の相場
フィリピン21万~30万円
インド30万~60万円
ベトナム25万~40万円
中国35万~55万円
タイ27万~37万円
インドネシア24万~32万円

ただ、フィリピン人エンジニアの人月単価は年に10~20%程度上昇していますので、今後依頼する際には事前に見積もりをよく確認する必要があるでしょう。

6.フィリピンにオフショア開発を委託する手順

ここまで読んで、「やはりフィリピンでオフショア開発したい」と考えている方も多いでしょう。

その場合は、どのような手順で進めればいいのでしょうか?

この章では、一般的な流れを説明します。

6-1.オフショア会社を選ぶ

まず、オフショア開発を請け負ってくれるフィリピンの企業を選びます。

日本からの委託に特化して、日本語でやりとりできる業者もありますし、「〇〇分野の開発が得意」と謳っているところもあります。

実績や得意分野を確認して、自社の案件にマッチする企業を探しましょう。

できれば最初から1社に絞り込まず、候補を数社挙げて検討しながら進めていくのがいいでしょう。

6-2.希望要件・仕様を相談する

委託先の候補が上がったら、まずは相談をします。

企画、プロジェクトの詳細、希望する要件や仕様を担当者に伝えて、可能かどうか確認しましょう。

その際に、開発内容など絶対に外部に漏洩させたくないことを伝えなければならない場合は、この時点で「秘密保持契約書」を交わしておくのがおすすめです。

6-3.契約方式・開発方式を決める

こちらの希望通りの対応が可能だとなったら、次に契約方式と開発方式を決定します。

以下のいずれか、案件に適したものを選びましょう。

【契約方式】

ラボ型契約専属のエンジニアチームを一定期間にわたって社外に確保し、開発を行う
請負契約案件1件に対して契約を結び、「決められた納期までに完成品を納品する」ことを約束する

【開発方式】

ウォーターフォール型最初に要件定義や仕様を決め込んで開発を進め、すべて完成してからリリースする
アジャイル型要件や仕様はアバウトなままで開発をスタートし、短期間で設計→リリース→テストを繰り返しながら、改修、改善を進める

ウォーターフォール型開発

6-4.見積もり

ここまで決まったら、見積もりを出してもらいます。

それを確認して、合意できれば契約に進みますが、問題や疑問があれば担当者に伝えて調整しましょう。

数社に並行して相談している場合は、相見積もりをとって比較すると、より適切な判断ができるでしょう。

6-5.契約・開発スタート

見積もりに合意できれば、いよいよ契約です。

契約書を作成・締結し、それを受けてフィリピンでの開発がスタートします。

7.フィリピンにオフショア開発を委託する際の注意点

さて、最後にひとつ知っておいてほしいことがあります。

それは、フィリピン人のと日本人の国民性の違いです。

そのため、オフショア開発では以下の点に注意してください。

・スケジュールは細かく管理する
・急な離職に注意する

7-1.スケジュールは細かく管理する

前述のように、フィリピン人は時間にルーズだと言われています。

「時間を守る」という概念があまりないため、遅刻もよくしますし、仕事の納期もしばしば遅れます。

そのため、スケジュール管理は日本側で行う方がよいでしょう。

開発プロセスの各段階で進捗を確認し、遅れがちであれば人員配置やスケジュールを再調整してください。

また、そもそも遅刻や急な休みのないよう、勤怠管理にも労力を割く必要があるでしょう。

7-2.急な離職に注意する

さらにフィリピン人の特徴として、会社へのロイヤリティや仕事に対するプライオリティが日本人ほど高くないことが挙げられます。

もし今よりいい条件の仕事や働きやすい職場があれば、プロジェクトの途中であっても離職・転職してしまうケースがよくあるのです。

また、フィリピンでは人前で強く叱責されたり指導されることを非常に嫌います

そのようなことがあると、「侮辱された」と感じて仕事をやめてしまう人もしばしばいるそうです。

もしフィリピン人エンジニアに指導する際には、人前ではなく一対一の場で行うように配慮しましょう。

8.まとめ

いかがでしたか?

フィリピンでのオフショア開発について、知りたいことがわかったでしょう。

ではあらためて、要点をまとめましょう。

◎フィリピンでのオフショア開発のメリットは、

・費用が安い
・英語力が高い
・時差が少ない

◎フィリピンでのオフショア開発のデメリットは、

・日本語が通じづらい
・進捗を細かくチェックしなければならない
・政情・治安に不安がある

◎フィリピンにオフショア開発を委託する際の注意点は、

・スケジュールは細かく管理する
・急な離職に注意する

この記事を踏まえて、あなたの会社がオフショア開発を成功させられるよう願っています。

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