「オフショア開発では、現地のエンジニアとどのようにコミュニケーションすればいい?」 「コミュニケーションがうまくとれずにオフショア開発がうまく回らない、よい対処法は?」
海外でソフトウエア開発を行う企業では、そのような悩みや疑問を持っていることでしょう。
たしかにオフショア開発では、コミュニケーションが問題になることが多くあります。
それは、日本側と現地との間に3つの壁があるためです。
・言語の壁
・文化や国民性の違い
・リモート環境の不便さ
これを乗り越えるためには、まず以下のスキルが必要とされます。
・英語力
・相手への理解と許容
・忍耐力と粘り強さ
さらに、以下のような対策をとることで、意思の疎通が円滑になるはずです。
・日本語がわかる人が多い国や企業を選ぶ
・語学力とコミュニケーション力が高いブリッジSEやPMを選ぶ
・国民性や文化の違いを学ぶ
・あいまいな表現を避ける
そこでこの記事では、オフショア開発でのコミュニケーション課題を克服する方法をくわしく解説します。
まず最初に、どのような課題があるかを知っておきましょう。
◎オフショア開発におけるコミュニケーション課題
その上で、解決の方法を探ります。
◎オフショア開発でのコミュニケーションに必要なスキル
◎オフショア開発でコミュニケーションを円滑にするための対処法
最後まで読めば、現地スタッフとうまく意思疎通を図る方法がわかるでしょう。 この記事で、あなたの会社がオフショア開発を成功させられるよう願っています。
1.オフショア開発におけるコミュニケーション課題
日本から海外に開発を委託するオフショア開発では、コミュニケーションを円滑にとることがプロジェクトの成功を左右します。
が、同時に日本と海外という、物理的にも心理的にも距離のある2者間でのコミュニケーションには、多くの課題があるのも事実です。
そこでまず、オフショア開発でのコミュニケーションではどんな課題が生じがちであるかを自覚しておきましょう。
1-1.言語の壁
まず第一に、日本と海外との間には「言語の壁」が立ちはだかっています。
オフショア開発の委託先は、インド、中国、ベトナム、フィリピンといったアジアの国々が中心ですが、同じアジアでも日本語を公用語としている国は日本以外にありません。
多くの場合は、先方に日本語ができるブリッジSEやプロジェクトマネージャー(PM)が立つか、双方が英語でコミュニケーションをとります。
つまり、片方または双方が外国語を用いなければならないのです。
が、ネイティブスピーカーでない限り、どうしても細かい表現ができなかったり、間違って理解したりすることは避けられないでしょう。
オフショア開発では、日本側で要件定義書を用意して委託先に渡し、現地でブリッジSEやPMなどが現地語または英語に翻訳して作業するといった形がとられます。
その翻訳時に、些細な誤訳や誤読があったがために、こちらの意図とは異なる仕様で開発が進められてしまうというミスも、実際に起きるのです。
そうなると、修正作業の追加や納期遅れ、成果物のクオリティ低下など、プロジェクトにとって重大な問題を引き起こしかねません。
言語の壁は、それほど大きな問題だと言えるでしょう。
1-2.文化・国民性の違い
国が違うということでのもうひとつの壁は、文化や習慣、国民性の違いです。
中でもよく俎上にのるのは「時間に対する意識」でしょう。
多くの日本人は、「納期はかならず守らなければいけないもの」「納期遅れは重大な契約違反」という意識を持っています。
もし納期に遅れそうであれば、「残業や休日出勤をしてでも間に合わせる」ことを選択する人はまだまだ多いでしょう。
が、世界の中には時間や契約に関して、日本とは異なる捉え方をしがちな国もあります。 たとえば「納期はただの目安」という意識で、決められた終業時間内に作業が終わらなければ、「しかたない、納期を繰り下げればいい」と判断されるといったケースです。
時間だけでなく、仕事や働き方、成果に対する責任など、さまざまなシーンでカルチャーギャップはあるでしょう。
オフショア開発では、そういった認識の違いをあらかじめよく理解しておくことも重要なのです。
1-3.リモート環境の不便さ
日本と海外という物理的な距離も、問題につながる恐れがあります。
コロナ禍の現在、海外とのやりとりは実際に現地へ渡航する回数を極力減らし、リモートで行おうという流れになってきました。
そこでまず問題になるのが「時差」です。
日本と現地でリモートミーティングをする場合、双方の就業時間が重なる時間帯に行おうとすると、その範囲は限られます。
たとえば急ぎ対応しなければならない問題が起きて、こちらは朝イチに会議を設定したくても、先方の始業時間まで数時間待たなければいけない、ということもあり得るでしょう。
さらに、リモートでやりとりすると、音声や映像が途切れたり、聞こえづらかったりして、ミーティングが思うように進まないストレスもあります。
そのため、「1時間で済むはずのミーティングに2時間かかった」といった余計な時間や手間が生じることも覚悟しておかなければならないのです。
2.オフショア開発でのコミュニケーションに必要なスキル
オフショア開発では、コミュニケーションに関して越えなければならない課題があることがわかりました。
では、そのためには日本側と委託先のスタッフに、どのようなスキルが求められるのでしょうか? それは主に以下の3点です。
2-1.英語力
もっとも重要なのは、言語の壁を克服するための「英語力」です。
以下の表は、オフショア開発の委託先として人気の各国で、主にどのコミュニケーション言語が用いられているかをまとめたものです。
さらに、以下のような方法をとれば、さらに費用を抑えることも可能です。
国 | 主なコミュニケーション言語 |
中国 | 中国語、英語 ※日本語も比較的通じやすい |
ベトナム | ベトナム語 ※英語、日本語も通じる場合あり |
インド | ヒンディー語など、英語 |
フィリピン | フィリピン語、英語 |
ミャンマー | ミャンマー語 |
インドネシア | インドネシア語 ※英語も比較的通じやすい |
タイ | タイ語 |
このように、多くの国では英語での開発に対応しているため、英語力が高ければコミュニケーションがとりやすくなるはずです。
ただ、オフショア開発においては「英会話ができるだけ」では片手落ちです。 同時にITに関する理解も深く、それを英語で表現できるスキルがあれば、システム開発のさまざまなシーンで誤解のないコミュニケーションが可能になるでしょう。
2-2.相手への理解と許容
また、文化や国民性の違いを克服するには、相手を理解して受け入れる「理解力・許容力」も必要です。
「1-2.文化・国民性の違い」では、納期遅れの例を挙げましたが、実際にはそのような「いい・悪い」の二元論で片付けられない文化的な食い違いも多々あります。
たとえば、「仕事の進捗を逐一上司に報告する」という習慣がなかったり、「指示された作業のみを行う」ことを良しとして、日本でしばしばある「言われなくても察してこの作業もやっておきました」という行動は逆によくないものとされる、などです。
このような相違に関しては、相手を否定してしまうとコミュニケーションが成り立ちません。 まずは相手の文化、考え方を理解し、受け入れた上で、お互いの認識をすり合わせるという対応が求められます。
2-3.忍耐力・粘り強さ
前項とも関係しますが、異文化間のコミュニケーションが円滑に回るまでには、双方が相手を理解し、受け入れ、すり合わせるという手間と時間がかかります。
途中でぶつかり合ったり、自分の言いたいことが理解されずにいら立つこともあるでしょう。
そんなときに、すぐに諦めて投げ出してしまう人は、異文化コミュニケーションには向きません。
何度でも伝え、何度でも相手の話に耳を傾けることができる忍耐強さがあれば、時間はかかっても徐々に意思の疎通が図れるようになるはずです。
3.オフショア開発でコミュニケーションを円滑にするための対処法
前章では、海外とのコミュニケーションに必要なスキルを挙げました。
が、誰もがそのスキルを持っているわけではありません。
そして、必要なスキルがなくても、オフショア開発を委託しなければならないこともあるでしょう。
そこで、英語力や許容力、忍耐力がなくても、オフショア開発でのコミュニケーションを円滑に運ぶことができる具体的な対処法も紹介しておきます。
3-1.日本語がわかる人が多い国・企業を選ぶ
「英語力に自信がない」という場合は、オフショア開発の委託先を「日本語が通じやすい国」「日本語OKの開発会社」にすれば問題ありません。
「2-1. 英語力」で各国の主なコミュニケーション言語を表にまとめましたが、以下に再掲しますので見てください。
中国、ベトナムは比較的日本語を使える人が多い国です。
国 | 主なコミュニケーション言語 |
中国 | 中国語、英語 ※日本語も比較的通じやすい |
ベトナム | ベトナム語 ※英語、日本語も通じる場合あり |
インド | ヒンディー語など、英語 |
フィリピン | フィリピン語、英語 |
ミャンマー | ミャンマー語 |
インドネシア | インドネシア語 ※英語も比較的通じやすい |
タイ | タイ語 |
また、その他の国でも、日系のオフショア開発企業が進出しているケースも多くあり、そこなら日本人エンジニアが在籍しています。
そういう企業を探して委託すれば、日本語のみでのオフショア開発も可能です。
3-2.語学力とコミュニケーション力が高いブリッジSEやPMを選ぶ
一般的なオフショア開発では、日本側と現地のエンジニアとの橋渡し役、パイプ役を担うのは「ブリッジSE」や「プロジェクトマネージャー(PM)」です。
彼らが日本からの指示を受け、現地語に訳してエンジニアたちに伝えたり、エンジニアから上がってきた仕様書を日本語に翻訳して納品したりします。
そのため、ブリッジSEやPMの語学力が高ければ、誤訳や誤読によるミスは最小限にできるでしょう。
オフショア開発企業の中には、優秀なエンジニアに日本語教育を施して、日本向けのPMを育成しているケースもありますので、そういう人材を探してください。
その際に重要なのは、できれば事前にPM候補と直接対面することです。
実際に対話してみて、日本語能力と業務スキルを確認し、信頼できるレベルの人材に依頼しましょう。
3-3.国民性や文化の違いを学ぶ
事前に、委託先の国の国民性や文化を学んでおくことも必要不可欠です。
「この国の働き方はどうなっているのか」
「時間や約束に関する意識はどうか」
「仕事に対する責任感、責任範囲をどう捉えているか」
など、一緒に仕事をするに際して知っておきたい相手の特性を理解するのです。
あらかじめある程度の覚悟があれば、実際に委託してみて何かコミュニケーションの齟齬があった場合にも、慌てず対応できるはずです。
場合によっては、「A国に委託を考えていたけれど、文化的に協調するのが難しそうなので、B国に委託しよう」と考えが変わるかもしれません。
最近では、オフショア開発の相談を受け付けるサービスやサイトもありますので、利用してくわしい情報を得るのもいいでしょう。
【オフショア開発に関するサイト・サービス】
オフショア開発.com | ホームページで案件に合った委託先を検索したり、各国のオフショア開発事情の情報を得ることができるほか、「専任コンシェルジュサービス」では無料相談も受け付けている |
発注ナビ | 自社にマッチしたオフショア開発の委託先を、無料で探してくれるサービス専門のスタッフが相談に乗ってくれる |
3-4.あいまいな表現を避ける
上記3点は、オフショア開発を委託する前にすべき対処法でしたが、実際にプロジェクトが走り出したあとにもできることがあります。
それは、委託先とのコミュニケーションでは、日本語ならではのあいまいな表現を避けるということです。
外国人が日本語に関して「難しい」と感じることのひとつが、あいまいな表現や複雑な言い回しの多用です。
たとえば、依頼を断る際に「できなくはないけれど…」と言って、言外に「できない・やりたくない」ことを匂わせることがあるでしょう。
が、これは外国人からすれば、「できるのか、できないのかどっち?」と混乱を招きます。
ですからオフショア開発では、「できる/できない」「YES/NO」ははっきり言いきりましょう。
指示を出すときも、「これ、前と同じようにやっておいて」「時間があるときでいいから」といった言い方ではなく、「〇〇と同じ△△の作業を、いついつまでに完了させて」と伝えます。
相手のことをよく理解した上で、誤解される余地のない言葉でコミュニケーションをとることを心がけましょう。
まとめ
いかがでしたか?
オフショア開発のコミュニケーションに関して、知りたいことがわかったかと思います。
ではあらためて、ポイントをおさえておきましょう。
◎オフショア開発のコミュニケーション課題は以下の3点
・言語の壁
・文化や国民性の違い
・リモート環境の不便さ
◎オフショア開発でのコミュニケーションに必要なスキルは3つ
・英語力
・相手への理解と許容
・忍耐力と粘り強さ
◎オフショア開発でコミュニケーションを円滑にするための対処法は4点
・日本語がわかる人が多い国や企業を選ぶ
・語学力とコミュニケーション力が高いブリッジSEやPMを選ぶ
・国民性や文化の違いを学ぶ
・あいまいな表現を避ける
これを踏まえて、あなたの会社のオフショア開発が成功するよう願っています。